大学1年生が躓きやすい数列の極限定義(ε-δ論法)をどう教えるか*1
最近,どうもエントリがひどいので,ここら辺で長めのを一つ.
以前,食堂でM氏と話し合っていた話題がこれ.M氏曰く,「自分はε-δ論法を最初に教わったときは,ものすごく自然な考え方だと思って納得したのだが」とのこと.そう思ってくれる人が多ければいいのですが,やっぱり現実はそうじゃないですよね.じゃあどう教えるか.
おそらく4つの段階に分けられるんじゃないでしょうか.
1については,M氏がとてもナイスな例を挙げてくれました.
これが収束するかどうかと聞いて,「1に収束する」という答えが大勢を占めればしめたものです.これだって,2^k項目をピックアップしていけば0に収束するのでおかしな結果になります.「素朴な『限りなく近づく』という概念に頼っていては,上の数列の収束に関して間違った判断をしかねない」ということを教える上で大変示唆的な例だと思います.さすが*1.
2はどうだろう.距離が近づいていくということだという根底にある考え方はすごく理解しやすい気がします.問題は3です.数列a_nがαに近づくという定義の中には
任意のε>0に対して,ある番号Nが存在して,n>Nならば|a_n-α|<εである
と,全称と存在が両方出てきています.昔は大学入試問題で,全称と存在が合わさったような命題についての問題が出題されていたような気がするのですが,最近はめっきり見なくなりました*2.論理についての基本的な運用が侭ならないうちに,この定義を見ると混乱を来す気がします.ちまたではこれを2人のプレーヤーの間のゲームと見なす考え方がありますが,他に「語り方」はあるのでしょうか.
4については,将来数学をやる人が,幾何とか解析を勉強していく中で勘を磨いた方がいいとは思うのですが,それももったいない気がします.漸化式で表される数列の極限の問題とかはいい気がするのです.極限値を予測して,それとの距離を評価していこうとする戦略が身に沁みてわかる.距離の評価が大事なんですよね.
とりとめもなく書きましたけど,こういう,自分にとって当たり前のことを説明することは,割と色々なことを考えさせてくれますな.ご意見があればどうぞ.