やっと見つけた

土曜日に渋谷のBook 1stへ行ったら,たまたまあったのでうれしくなって,

熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)

熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)

を購入.そして味わうように読んでいる.この本はまさに,「味わう」本である.

大学1年の夏学期で熱力学をやったのだが,今ひとつつかめなかった.ようやっとわかるようになってきたのは冬学期の統計物理の授業のときに,清水先生の作った講義ノートを見たときだった.清水先生はCallenの教科書に準拠していて,その公理的スタイルのおかげでようやくつかめてきた.しかしこの本はさらに公理的かつ体系的なスタイルを徹底させているのだ.何が現実世界からの要請であるのかがはっきりしているのは他の教科書にもある利点だが,それをできるだけ自然で最小限のものに抑えようとしているところなどは秀逸である.(逆にCallenの本は,エントロピーの存在を公理としているが,これだとエントロピーの何たるかがわかりにくい気さえしてきた.)

また,最初にフレドホルムの自由エネルギーを定義するところなどは,最初にこの本のうわさをOz君から聞いたときは奇異に感じた.しかしながら,素性のわかりにくい内部エネルギーを表に出すよりも,温度という測定可能なものを表立たせるほうがイメージしやすい.しかもこの本では内部エネルギーを,断熱過程の性質を徹底的に洗いだし,ひとつのポテンシャルとして定義しているのだ.この本のスタンスからいってこれは当然のことだろう.だが,「内部エネルギーなんて当たり前のもの」というふうに考えるのはまずいのだな.マクロな操作のみで定義できる内部エネルギーに対する認識が甘すぎた.

ということで,熱力学に触れたことのある人にとっては一度読むに値する本だ.あと,統計物理学の本も執筆中とのことなので,これも期待が持てる.

ふう,長く書いてしまったな.まだ途中までしか読んでいないというのに.そんなにこの本が入手できたことが嬉しいのだろうか,自分.せめてファミ通並みの文字数にはならんか・・・.